1.広島で選抜育種された「温品ホウレンソウ」
昭和31年ホウレンソウで育苗登録第1号となった品種で,育成者は安芸郡温品町(現在,広島市東区温品町)の榎木為一氏である。発表当時は耐暑性の強い早生種として全国的に話題となった品種である。その後,F1品種の普及につれて徐々に作られなくなり,姿を消した品種で,原種はもう無くなったと思われていた。
平成4年,ダム建設により湖底に沈没する三良坂町灰塚の平尾虎雄氏より灰塚在来ホウレンソウとして提供された。その来歴は当時の営農指導員宮本勝三氏により「温品」であることが明らかとなった。温品ホウレンソウは収量,耐病性の面から問題があると云われているが,久井町梶谷満昭氏は「独特の味を生かして市場出荷したい」と話している。選抜育種も計画されているので,梶谷系温品ホウレンソウとして再び市場に出てくる日も近いものと思われる。 |
2.鮮やかな緑色と辛味が特色のつま物「テイレギ」
テイレギは冬季の畑雑草であるタネツケバナの大型種で和名をオオバタネツケバナという。水温が18℃前後の流水中で良く生育する。安浦町野呂山の伏流水が湧く谷で生育が確認されている。葉にピリッとした独特の辛味があり,柔らかい幼芽を刺身のつまやお浸しとして利用する。安浦町では商工会青年部が中心になって周年栽培技術の開発と販売先の開拓に取組んでいる。愛媛県松山市高井は古くからの産地で,本県はここから入ったものと推察される。その年代は明らかでないが,郷土民謡「安浦たんと節」にもその名が出てくることから,明治時代には既に一般に利用されていたものと思われる。 |
3.色々な料理に使える大型のきゅうり「青大」
「青大」は品種分類では河南型の青長群に属する。耐暑性が強く肉薄で軟らかく,着果数は少ないが1果重が700〜800gにもなる晩生の大型キュウリである。古くから福岡,広島を中心とした西日本で広く栽培されていたが,現在栽培が普及している節成り群に比べて晩生で収量が劣るため,栽培面積は次第に減少し,広島県でもすでに栽培がなくなったものと思われていた。ところが,この度,福山市,神石高原町,庄原市西城町等で栽培が続けられていることが確認された。特に福山市ではこのキュウリを「どぶうり」と呼び,現在も5〜6人の農家がどぶうり生産組合を結成して市場出荷を続けている。これらの種子はいずれの地域でも100年以上に亘って自家採種が続けられているため,地域特有の生態型になっていると考えられる。
現在流通しているキュウリの用途がサラダや浅漬け等生食が主体なのに対し,青大はよく熟した果実を収穫して生食以外にも油炒めやあんかけ等煮食,味噌漬けや粕漬け等の各種漬け物として利用する等,用途は極めて広い。 |
4.コンパクトで栽培しやすく品質の良い「立花豌豆」
広島県には島しょ部地帯を中心に古くから栽培されている矮性のキヌサヤエンドウがある。向島に入った品種は白花,能美島に入った品種は赤花で,赤花種の中には夏播き栽培にも利用できる極早生種もあった。入った年代については,農事調査の記事や古老の話から推測すると,能美島では明治10年頃,向島では明治40年頃と思われる。
向島の栽培は秋播き春採りで,その後,桑原茂三郎氏によって開発された監枝栽培技術と共に有名となった立花豌豆は,草晩生でかなりの変異が見られるが,草丈はいずれも1m足らずと極めてコンパクトにもかかわらず,莢は大きく肉厚で柔らかく食味が良い。栽培は容易で,寒冷地以外では秋播き,寒冷地では春播きする。 |